はじめに
「税制改正って、自分の会社に関係あるの?」──そう思いながら、毎年スルーしている社長も多いのではないでしょうか。
令和8年度の税制改正は、中小企業オーナーにとって見逃せない内容が多数含まれています。特に賃上げ税制・設備投資・少額経費の扱いは、対応するかしないかで数十万〜数百万円単位の差が生まれることもあります。
この記事では、売上5億円以下の中小企業オーナーが「知っておくべき6つのポイント」を、専門用語をできるだけ使わずに解説します。顧問税理士に会う前の予習として、ぜひ5分だけお付き合いください。
① 賃上げ促進税制|中小企業は使える、大企業は廃止
何が変わった?
給料を上げた会社に法人税を安くする「賃上げ促進税制」は、大企業向けが廃止となりました。一方、中小企業向けは基本的に維持されます。
ただし、これまで上乗せ控除として使えた「教育訓練費への支出分(10%加算)」は廃止されました。
うちの会社への影響
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| 会社の規模 | 制度の適用可否 | 内容・影響 |
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中小企業 (資本金1億円以下等) |
継続 | 引き続き、賃上げ分に応じた税額控除が活用可能です。 |
| 大企業 | 廃止 | 今回の改正により、制度の対象外となります。 |
賃上げを検討している中小企業にとっては、「従業員の給料を上げると法人税が戻ってくる」仕組みが今年も使えます。
やるべきアクション
- 前年比で給与総額が増えているか確認する
- 増えているなら、顧問税理士に「賃上げ促進税制の適用漏れがないか確認してほしい」と伝える
② 新設:特定生産性向上設備等投資促進税制|攻めの設備投資に強力な後押し
何が変わった?
令和8年度から、「攻めの投資」を後押しする新しい設備投資減税が創設されました。正式名称は「特定生産性向上設備等投資促進税制」です。
対象は、一定の要件を満たした設備投資計画に基づく機械・装置
| 要件項目 | クリアすべき基準 |
| 投資計画の合計額 |
5億円以上 ※グループ全体での合算も可 |
| 年平均の投資利益率(ROI) |
15%以上 ※算出根拠となる資料の添付が必要 |
建物など。中小企業の場合、以下の要件を満たすと即時償却(購入年度に全額費用化)または税額控除最大7% を選べます。
うちの会社への影響
「5億円以上の投資」となると、規模の小さい会社には少しハードルが高く感じるかもしれません。ただし、複数年にわたる投資計画をまとめて申請できるため、工場の増設・大規模な設備更新を検討している会社には非常に有利な制度です。
やるべきアクション
- 向こう数年で大きな設備投資(工場・機械・IT基盤など)を検討しているなら、早めに顧問税理士・産業競争力強化法の手続きについて相談する
- 投資計画書の作成が必要になるため、税理士・経営コンサルタントと事前に動く
③ 少額減価償却資産の特例拡充|「30万円まで」が「40万円まで」に
何が変わった?
中小企業だけに認められている「少額減価償却資産の特例」の上限が引き上げられました。
- 改正前:取得価額 30万円未満 まで→購入した年に全額経費
- 改正後:取得価額 40万円未満 まで→購入した年に全額経費
また、この特例の適用期限も2029年3月末まで3年間延長されました。
うちの会社への影響
たとえば、1台38万円のノートパソコンや35万円の業務用機器を購入した場合、これまでは数年に分けて減価償却する必要がありましたが、今後は購入した年度に全額を経費にできます。
これはキャッシュフロー的にも、税負担的にも有利です。物価上昇に対応した実質的な「使いやすさの向上」です。
やるべきアクション
- 30〜40万円未満の設備・備品・PC等の購入を検討しているなら、令和8年度(2026年4月以降)に購入するタイミングを合わせると全額経費化できる
- 決算前に購入予定のものがあれば、税理士と相談して時期を調整する
④ 消費税「3割特例」新設|小規模事業者の負担を軽減
何が変わった?
インボイス制度への対応で消費税の申告・納税が始まった小規模事業者向けに、新たな軽減措置が設けられました。
2026年10月から3年間(2029年9月まで)、消費税の納付額を「売上にかかる消費税額の30%」に抑えられる「3割特例」が新設されます。
うちの会社への影響
たとえば、売上にかかる消費税が100万円の場合、通常は仕入れ等の控除を差し引いた後の金額を納付しますが、この特例を使うと最大で30万円に抑えられる可能性があります(経費の多寡によって有利不利が変わります)。
この特例は、規模の小さい事業者・フリーランスを多く使っている業種(建設、IT、デザインなど)の会社オーナー自身にも関係することがあります。
やるべきアクション
- 自社が対象になるか、または取引先(個人事業主・フリーランス等)が対象になるかを税理士に確認する
- 2026年10月以降の消費税申告の方針について、早めに方向性を決める
⑤ 事業承継税制|特例計画の提出期限が延長
何が変わった?
会社を後継者にスムーズに引き継ぐための「事業承継税制(特例措置)」について、特例承継計画の提出期限が延長されました。
これにより、まだ事業承継の計画を正式に提出していない会社も、引き続き特例措置を活用できる道が開かれています。
うちの会社への影響
「いずれは子供や幹部に会社を渡したい」と考えている社長にとっては、この制度を使うことで自社株式の贈与・相続にかかる税金を大幅に軽減できます。
後継者が決まっていなくても、「特例承継計画」だけ先に提出しておくことが有効な場合があります。
やるべきアクション
- 事業承継を5〜10年以内に考えているなら、税理士に「特例承継計画をまだ出していないが、今からでも間に合うか確認してほしい」と依頼する
- 自社株の評価額を事前に把握しておくと、対策がしやすくなる
⑥ 防衛付加税|令和9年1月から所得税に1%上乗せ
何が変わった?
防衛力強化の財源として、令和9年(2027年)1月から所得税に税率1%の付加税が課されることが決まりました。
これは法人税ではなく、社長個人の所得税に影響する話です。
うちの会社への影響
たとえば、役員報酬や配当などで年間所得が多い場合、そこにかかる所得税額がさらに1%増えます。節税対策として役員報酬の額を見直すタイミングにもなりえます。
やるべきアクション
- 自分の役員報酬・配当がどの程度の所得税になっているか、税理士に確認する
- 令和9年以降の手取り額が変わることを念頭に、報酬設計を見直す検討を始める
まとめ|令和8年度改正、中小企業オーナーが動くべき優先順位
| 優先度 | 項目 | やること |
| ★★★ |
少額減価償却特例 (上限40万円に拡充) |
30〜40万円の設備購入タイミングを検討 |
| ★★★ | 賃上げ促進税制 | 給与増加分の控除を適用漏れなく申請 |
| ★★ | 特定生産性向上設備等 | 大型設備投資を検討中なら早めに相談 |
| ★★ | 事業承継税制 | 特例承継計画の提出状況を確認 |
| ★ | 消費税3割特例 | 対象になるか確認(2026年10月〜) |
| ★ | 防衛付加税 | 令和9年以降の役員報酬設計を見直し |
税制改正は「知っているかどうか」だけで、手元に残るお金が大きく変わります。「うちの会社でどれが使えるか」を一度整理するだけで、数十万円単位の節税につながることも珍しくありません。
ぜひ顧問税理士に「令和8年度税制改正で、うちが対応すべきことはありますか?」と一度聞いてみてください。
この記事に関するご相談は、お気軽にお問い合わせください。
